サステナビリティ

気候変動への対応

当社グループは、気候変動の抑制を喫緊の課題と捉え、持続可能な社会の構築に貢献するため温室効果ガスの低減に取り組むなど、環境経営を推進しています。

気候変動への基本的な考え方

当社グループは、地球温暖化防止をグローリー環境ビジョンの主要テーマの一つとしており、2050年度にカーボンニュートラルの実現(スコープ1・2についてCO2排出量実質ゼロ)を目指す「2050環境目標」を掲げています。

事業活動におけるCO2排出量の削減およびバリューチェーンにおける環境負荷低減について重点的に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

TCFD提言に基づく情報開示

TCFDロゴ

当社グループは、2021年11月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、様々な取り組みを推進しています。今後は、各取り組みの進捗に合わせ、TCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示の充実を図っていきます。

ガバナンス

当社グループは、脱炭素社会に貢献する事業の推進を重要課題の一つとして捉え、持続可能な社会の実現に向け、事業活動のあらゆる局面での環境負荷軽減を目指した環境経営を推進しています。

気候変動に関連する課題は、取締役会から指名された環境マネジメント担当役員を委員長とする「環境委員会」(年2回)によって議論しており、決定された重要事項およびそれらの取り組み状況については、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」(年2回)の重要課題の一つとして報告し、承認を得ています。また、これらの活動結果は、取締役会に対し定期的に報告することとしており、サステナビリティに係る経営の意思決定と業務執行の監督が適切になされる体制を整備しています。

戦略

当社グループは、当社グループの事業にとって重要と考えられるリスクと機会、キードライバー(当社グループの事業に影響を与えると思われる要因)、気候変動が中長期で当社事業にもたらすインパクトを、以下の通り想定しています。

また、IPCC※1やIEA※2のシナリオに基づき、事業や財務に及ぼす影響を分析し、その対応策を立案、推進しています。今回のシナリオ分析では、パリ協定の目標に沿って気候変動対策が実施される「1.5/2℃」と、気候変動対策が実施されず、気候変動の影響が生じる「4℃」の2つのシナリオ※3を用い、TCFDが例示する典型的なリスクと機会を参考に分析を行いました。

「1.5/2℃シナリオ」(パリ協定の2℃目標が達成された世界)

炭素税の導入に伴う事業コスト増加については、中から大の影響が確認された一方、エネルギー(電力、ガス、ガソリン等)価格変動の影響においては、事業コスト減少による中程度の影響が確認されました。

「4℃シナリオ」(現在のペースでCO2が増え続け、地球温暖化が進む世界)

河川氾濫や高潮により、生産や物流拠点が被災し復旧にかかる費用、事業・操業停止による利益の減少が想定されますが、これらの財務への影響はともに小さいことが確認されました。

リスク/機会 キードライバー
(要因)
事業インパクト 期間※4 財務
インパクト※5
当社
グループの対応
分類 項目 1.5℃
シナリオ
4℃
シナリオ
移行
リスク
政策

法規則
炭素税の導入 炭素税の導入により事業コストが増加 中期 <中>
コスト増加
  • 計画的な省エネ/再エネ設備への投資の実施
  • 再生可能エネルギー比率の向上
  • 排出権取引の導入
長期 <大>
コスト増加
<中>
コスト増加
対象法令の拡大/複雑化 法令遵守対応のためのコストが増加 短~長期 <中>
コスト増加
  • 法規制に対応する技術/製品開発への取り組み
  • 専任スタッフによる各国法規制の動向注視/対応
技術 省エネ製品/サービスへの市場ニーズの高まり 市場競争力維持/向上のための研究開発費が増加 中~長期 <中>
コスト増加
市場/業界動向を踏まえた技術/製品開発
環境配慮型製品の開発遅れによる売上高の減少 <中>
売上減少
市場 原材料コストの上昇 エネルギー(電力、ガス、ガソリン等)価格の変動 中期 <中>
コスト減少
<中>
コスト増加
再生可能エネルギー比率の向上
長期 <中>
コスト減少
<中>
コスト増加
評判 ステークホルダーからの脱炭素化に向けた要求の高まり(温室効果ガス排出量削減に向けた社会的要請の高まり) 脱炭素に向けた取り組みや情報開示を怠った場合、投資家の投資判断が悪化 短~長期 <大>
企業価値減少
中長期環境計画の遂行と、取り組みの適切かつ積極的な開示
ESG関連情報開示基準の厳格化による対応コストの増加 <大>
コスト増加
リスク/機会 キードライバー
(要因)
事業インパクト 期間※4 財務
インパクト※5
当社グループの対応
分類 項目 2℃
シナリオ
4℃
シナリオ
物理的
リスク
急性 自然災害の激甚化 自社工場や従業員の被災(台風や洪水等)等により、操業/営業停止の損失が発生 中期 <小>
売上減少
  • 生産拠点の水害リスク評価を実施するとともに、事業継続計画(BCP)を策定
  • 原材料の調達先や供給体制、輸送ルート等におけるリスクの分散化
長期 <小>
売上減少
建物/生産設備の損壊により設備復旧のコストが増加(高潮、河川氾濫、洪水) 中期 <小>
コスト増加
長期 <小>
コスト増加
自然災害対策費用や保険料等のコストが増加 短~長期 <小>
コスト増加
部品調達先の操業不能により部品供給が停止 短~長期 <小>
売上減少
慢性 海面の上昇 海抜の低い生産/物流拠点の操業停止 中~長期 <小>
売上減少
平均気温の上昇 空調設備の負荷上昇により運転コストが増加 短~長期 <小>
コスト増加
省エネルギー対策、高効率な空調設備の導入
従業員の業務効率が低下 短~長期 <小>
コスト増加
機会 製品

サービス
環境配慮型製品の需要拡大 環境配慮型製品の需要拡大による売上高の増加 中~長期 <大>
売上増加
環境配慮型製品の創出

※1 IPCC:気候変動に関する政府間パネル

※2 IEA:国際エネルギー機関

※3 使用したシナリオ

評価内容 使用したシナリオ
炭素税、エネルギー価格 IEA WEO2022/NZE,APS,STEPS
自然災害 IPCC:AR6/RCP2.6,RCP4.5,RCP8.5

※4 期間の定義

区分 期間 備考
短期 ~2026年度まで 当社グループの「2026中期経営計画」期間
中期 ~2030年度まで 2030年までの中期環境目標を設定済
長期 ~2050年度まで ネットゼロを想定した2050年までの長期環境目標を設定済

※5 財務インパクトの定義

評価結果 影響金額
10億円以上
1億円以上10億円未満
1億円未満

リスク管理

当社グループは、代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」において、事業運営上の様々なリスクへの対応を行っており、気候変動リスクについても、リスク項目の一つとして特定しています。気候変動リスクの特定とその対応については、環境マネジメントシステムの仕組みを活用し、適切に管理しています。

指標と目標

当社グループは、気候変動における指標をCO2排出量と定め、2050年度にカーボンニュートラルの実現(スコープ1・2についてCO2排出量実質ゼロ)を目指す「2050環境目標」と、そこからバックキャスティングしたマイルストーンとして「2030環境目標」を設定しています。2024年4月からの3カ年を計画期間とした「2026中期経営計画」の策定に伴い、中長期環境目標の見直しを実施し、SBT(Science Based Targets)イニシアチブの認定基準に基づく目標に変更しました。事業活動におけるCO2排出量(スコープ1・2)については、集計範囲を当社および国内連結子会社(ISO14001認証取得拠点)から当社および国内・海外連結子会社に拡大するとともに、2030年度に向けた目標を42.4%削減(2022年度比)に変更し、グローバルで取り組みを推進していきます。

具体的には、各生産拠点における高効率な設備の計画的な導入・更新や太陽光発電の導入拡大、CO2フリー電力の購入、社用車のエコカーへの切り替えなどを進めていきます。

また、スコープ3についても、2030年度に向けた削減目標を新たに設定し、バリューチェーンでカーボンニュートラル実現を目指していきます。

※国連グローバル・コンパクト、CDP(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)による共同イニシアチブ。企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進している。

環境長期目標

CO2排出量削減の取り組み

スコープ1・2

当社グループは、2050年度にカーボンニュートラルの実現(スコープ1・2についてCO2排出量実質ゼロ)を目指す「2050環境目標」の達成に向け、グローバルで取り組みを推進しています。具体的には、空調設備の更新やLED照明への切り替えなどによる省エネ設備の導入、太陽光発電による再生可能エネルギーの利用拡大、100%再生可能エネルギー由来のCO2フリー電力への切り替え等を進めています。こうした取り組みにより、2024年度には、国内の主要拠点(本社・本社工場、埼玉工場)において、事業活動におけるCO2排出量実質ゼロを達成できる見込みです。

スコープ3

当社グループのCO2総排出量のうち、スコープ3が全体の約94%を占めており、その中でもカテゴリー1(購入した製品やサービスの製造時に排出されるCO2排出量)及びカテゴリー11(製品使用時に排出されるCO2排出量)が、約88%と大半を占めています。そのため、当社グループでは、この2つのカテゴリーをスコープ3における重点取り組み対象に設定し、CO2排出量の削減活動に取り組んでいます。カテゴリー1については、主要な一次サプライヤーとのCO2削減目標合意に向けたエンゲージメント活動の実施、カテゴリー11については、新製品開発時の製品アセスメント徹底によるエネルギー効率改善を図るなど、バリューチェーン全体における環境負荷低減活動を推進していきます。

スコープ3カテゴリ別CO2排出量

※ スコープ3の集計対象は次の通りです。
 1.購入した製品・サービス、2.資本財、3.スコープ1,2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動、4.輸送、配送(上流)、5.事業から出る廃棄物、6.出張、7.雇用者の通勤、8.リース資産(上流)、11.販売した製品の使用、12.販売した製品の廃棄

※当社事業に関係しないカテゴリ(9・10・13・14・15)は、該当なしとしています。