サステナビリティ

社外取締役対談

グローバル化への舵切りと、デジタル技術の強化に向けた人的資本の充実に間断なく取り組み、長期ビジョン2028の実現を目指します
座談会

Q1:長期ビジョン2028の実現に向けて、課題をお聞かせください。

三和
当社グループが長期ビジョンを策定したのは2018年です。以来、世の中はさまざまな進化、変革、混乱を経てきましたが、当社グループは、ビジョン実現に向けた基盤を整えるために、海外ではAcrelec社やRevolution社の買収、国内ではアドインテ社、Showcase Gig社との資本業務提携などの布石を打ってきました。こうした布石を成長のための基盤として確立し、推し進めていくことがこれからの課題となりますが、私は、「長期ビジョン2028」の達成に向けては明るい見通しを持っています。DMP事業、次世代型飲食ビジネスソリューションなど、将来の新たな柱となり得る事業が着実に育っているように感じています。

社外取締役 井城讓治

社外取締役 井城 讓治

井城
三和社長がおっしゃるように、当社はこれまでさまざまな手を打ってきました。その中には順調なものもあれば、想定どおりの成果に結びついていないものなどいろいろあるように思います。私は、それとはちょっと違う視点から長期ビジョンの達成に向けた課題をお話ししたいと思います。
当社グループは、売上高で見るとすでに半分以上を海外が占めています。国内市場については、今後も“キャッシュ”、“アラウンドキャッシュ”ともに相当の事業規模が見込まれ収益の源泉であることは変わりないと思います。しかし、事業の軸足はこれからさらに海外へと移っていくはずです。ところが、これが大きな課題なのですが、会社としてのベースは依然として日本に置いたままなのです。たとえば組織形態や人事システム、投資のスタイルなど、経営トップから従業員まで、会社としての多くの考え方が日本の文化や常識を基軸にしています。このマインドセットをそろそろ改めて、これからは世界で生きていくのだという意識を全員で共有すべきだと思うのです。

   
社外取締役 内田純司

社外取締役 内田 純司

内田
井城さんのおっしゃるとおりで、これからは事業を日本と海外で分けるという発想そのものにも限界がやってくるのではないでしょうか。もっと大きな視野で、世界が当社グループにどのような価値を求めているのか、柔軟に、そして自信を持って考えていくべきだと思います。
そこで大切になるのが、自分たちの強みを再認識すること。当社はこれまで、他社では実現できないような製品を開発し、新しいビジネスを立ち上げることで成長を遂げてきました。そうしてお客さまに喜んでいただき、従業員たちの誇りにもつながってきたわけです。これから事業環境はさらに変化していくと思いますが、この姿勢はぜひ貫き通してほしい。それは製品の形態がハードからソフト、サービスへと変化していっても変わることはないと思います。
私は、このような姿勢を象徴しているのが、当社のロゴマークを中心とする製品デザインだと考えています。紺と白の鮮やかな組み合わせで、清潔さと信頼性を象徴するグローバルなデザイン。日本ばかりでなく、欧米やアジアなど世界でも広く浸透しています。また最近では、シンプルで美しいオールブラックの製品群も登場し、スマートな近未来を彷彿とさせるものとなっています。これらのデザインは、グローリーが誇る大切な無形資産(Intangible asset)といってよいと思います。

   
社外取締役 イアン・ジョーダン

社外取締役 イアン・ジョーダン

ジョーダン
お二人の話のとおり、グローリーは今、変化の最中にいるのだと思います。日本から世界へという展開に加えて、製品のスタイルもハードからソフトやサービスに変わりつつあります。このような変革を進めていくうえで、私が担うべき役割は2つあると考えています。
まず1つ目はスピード感を持ったDXの推進であり、それによって組織に変革をもたらしていくこと。おそらくあと数年のうちに、グローリーの事業も大きく様変わりしていくはずです。売上におけるソフトやサービスの比率がハードに匹敵するほどに拡大すると思います。そうなると、当然、企業としての立ち位置も変わってきます。日本から世界へとハード製品を提供する会社から、日本に本社を置くグローバル企業として、世界のお客さまにサービスやソリューションをお届けするというビジネスモデルに変化していく。また、そのためには人材もグローバル化、多様化させていかなければなりません。私が果たすべき2つ目の役割は、そのための道づくりをしていくことだと考えています。

Q2:持続的な成長を遂げていくためには、どのような基盤強化が重要だとお考えですか?

代表取締役社長 三和元純

代表取締役社長 三和 元純

三和
今、皆さんの話を聞いていて、ひとつ考えていたのは国内市場のことです。確かに今後、大きな流れとしては海外比率が高まっていくと思います。しかし、国内に目を向けても、金融市場においてまだまだ成長の余地がありますし、先ほど話した流通市場での取り組みなど、さらに面白いことにチャレンジできるのではないかと感じています。従業員のモチベーションを高めるためにも、経営トップとしてそのことをしっかりと社内外に発信していきたい。その一方で、グローバル企業としてのマインドセットも重要ですので、このバランスを図りながら全体のスピード感を高めていくことが私に課せられた責務だと思っています。ところで、皆さんは、グローリーが中長期的な成長を果たしていくためには、どのような基盤の強化が重要だと考えていますか?

ジョーダン
今もお話したように技術と人材、その両方が重要になってくると考えています。当社グループがこれから事業を成長させていくためには、常に新しいデジタル技術を取り込んでいかなければなりません。また、それと同時に、それらの技術を駆使して実際のビジネスを創っていく人材の確保も大切です。当社グループのケイパビリティを高めていくためには、こういった取り組みをグローバルな視点に立って進めていくことが非常に重要となります。

内田
私も技術開発とそれを可能にする人材、この2つに対する投資は今後も継続して注力していくべきだと考えています。お客さまはどのようなソリューションを欲しているのか?あるいは社会にはどんな課題が潜んでいるのか?このような動きを感度よくキャッチしていくためには人材の育成と技術の強化が欠かせません。中長期での基盤強化ということでは、経営システムの改革も必要だと感じています。もっとシンプルでオーガナイズされた経営システムを構築すべきではないでしょうか。そのための手段としては「経営の見える化」、つまりデジタル化が鍵を握ります。デジタル化を進めることは、結果的に言語の壁を超えてグローバル化にもつながり、経営のスピードアップにつながります。最近では、学校でもデジタル教育に力を入れていて若い人たちのリテラシーは非常に高くなっています。このような若い人たちが入社してきてすぐに活躍できるような土壌を今のうちから整えていくべきだと思います。

井城
私は、社外取締役に就いた時からずっと感じているのですが、当社は認識や識別の分野をはじめ、素晴らしい技術を数多く持っています。しかし、それを活用して事業化していくプロセスが少し弱いように感じます。この課題を解決するためには、内田さんが「感度」とおっしゃったように、ビジネス化に必要な感性を持ったリーダー人材を育てていくことが大事です。その点、グローリーはとても恵まれた環境を持っていると思うのです。これほど海外で事業を展開しているのですから、マーケット、ビジネス、人、技術に関して、世界から学べるチャンスはいくらでもあるはずです。次世代を担う技術開発のリーダーを育てていくことも、中長期的な成長を目指すためには欠かせないと感じています。

Q3:グローリーに対する今後の期待と、それを実現するための課題などあれば教えてください。

ジョーダン
ここ何年かにおける流通分野での著しい成長がよいヒントであるように、技術やソリューションの進化によって当社グループのビジネスがまた違う分野で拡大する可能性は大いにあると考えています。そのために必要となるのはグローバルな企業風土づくりであり、そこから生まれるイノベーションです。ぜひ失敗を恐れず大胆にイノベーションに挑んでいってほしいと思います。イノベーションをグローバルに迅速に展開していく力こそが、当社の最大の強みであり、当社グループの真の資産であると考えています。

内田
あまり知られていないかもしれませんが、当社グループは人材交流に熱心で、欧米やアジアの人材を日本に招くなどグループ内での交流をさまざまに進めています。日本で生まれた会社であることの誇りは大切にすべきですが、その一方で今後もこのような取り組みをさらに活性化していってほしい。多様な国や地域の従業員たちが交わり化学反応を引き起こしながら、次の新しいグローリーを創っていってほしいと思っています。

井城
私は、先ほども話したように、新しい技術から次の事業を生み出していく面白さを、一人でも多くの技術者に実感してほしいと考えています。その喜びを、私も若い技術者たちと一緒に分かち合ってみたいと思っています。

三和
今日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。今後はM&Aなどの案件についても、社内取締役だけの知識や経験では判断が難しく、社外取締役の皆さんの幅広い知見や俯瞰的な目線が重要になる場面がますます増えてくると思います。今日はグローバル化が大きなテーマとなりましたが、私自身の感覚では、当社は今、国際化をようやく卒業し、グローバル化に向けて一歩を踏み出したところ。取締役、そして従業員たちの力を結束してその歩みを確かなものにし、長期ビジョンの達成を目指していきたいと思います。