Q:社外取締役として期待されている役割について聞かせてください。
井城:
社外取締役として、独立・客観的な立場に立ち、業務執行の妥当性や合理性の観点から経営を監督するとともに、新領域事業や新市場向けの製品開発、市場開拓、M&A等、グループ経営戦略の立案と実行に際し、執行部門に対して強力に助言・後押ししていきたいと考えています。
内田:
株主をはじめとする社外の視点に立って、経営の一層の活性化を促すとともに、公正で適切な業務執行に資する発言を行うことが、社外取締役の責務と考えます。コーポレートガバナンス・コードの改訂に伴い、企業の持続的成長と中長期的な価値向上がさらに求められており、社外取締役の役割や責務が重くなってきていると認識しています。
Q:グローリーの現状のガバナンス体制について、評価と課題を聞かせてください。
井城:
取締役会と経営会議の棲み分けが進み、取締役会ではより戦略にフォーカスした議論が交わされるとともに、職務執行の監督機能が働いていると思います。また、取締役会に先立ち、前広に議題に関する情報提供をいただける点と、取締役会の場での議論が活発でさまざまな提言がなされている点は評価しています。ただ、議論がもっと侃々諤々としてもよいのではないかとも感じます。グローリーの海外事業をさらに成長させるためには、取締役会の構成メンバーに海外事業のバックグラウンドのある方を増やし、事業の重心と同じような構成にしていくべきだと考えます。
内田:
グローリーは、コーポレートガバナンス・コードが施行される以前より、社外取締役の起用や報酬、指名に係る諮問委員会の設置を行うなど、いち早くガバナンス体制を強化しており、高く評価しています。取締役会でも意見を述べやすいオープンな雰囲気があり、議論も闊達です。一方で、今後海外を軸にさらなる成長を図っていく上で、グローバル人材の育成、そしてガバナンスやリスクマネジメントをどうグローバルに進めていくかは大きな課題です。監査等委員会設置会社に移行したことにより、取締役会ではWhat to doである戦略的な議論を深め、How to doのオペレーションについては執行側で進めている内容を取締役会で報告し、共有しています。今後も経営戦略にフォーカスして議論し、フォローする取締役会にしていきたいと考えています。
Q:取締役会で中長期の視点で議論されている内容と、そこでの課題を聞かせてください。
井城:
2021年度からスタートさせている「2023中期経営計画」の戦略はよく検討されていると思いますが、やはりその戦略を実行する力がスピードも含め問われており、取締役会では、「同計画」の達成に向けて、最適な経営資源の配分などを議論しています。事業環境の認識については、トップや一部の管理職だけでなく、一人ひとりの社員にまで同じ温度で危機感が共有されていることが重要です。危機感が足りないと、スピードも含め目標レベルが甘くなりかねません。事業環境が刻々と変化する中、いかに危機感を共有するかが課題だと感じています。
内田:
当社は、2012年の英国タラリス社(現 Glory Global Solutions Ltd.)の買収など、いろいろな節目を経験しながらこれまで海外展開も順調に伸ばしてきましたが、環境変化もあり、ここへきて伸び悩んでいます。「2023中期経営計画」では、次の成長を目指し「コア事業と新領域事業のクロス成長」というコンセプトを掲げています。これから社内で具体的にどのようにその戦略を落とし込んで実行していくのか、その進捗を私もしっかりと見ていきます。また、新事業への種まきは辛抱強さが求められます。失敗をしても挑戦を続けることをサポートするカルチャーを醸成し、新しい道を切り拓いていくことが必要です。
井城:
中長期に次世代リーダーを育成・選任していく視点で考えると、一つのプロジェクトの中でも個々の役割を部分的に担当させるのではなく、最初から最後まで任せていくことで、広い視野で全体を俯瞰する力を身につけるような機会を与えることも重要です。その意味でも、私は、「より若い世代の社員に直接、質問や対話をする機会が欲しい」と会社に要望を伝えています。
内田:
人材についても、会社の売上は海外事業が半分を占めていますが、社員の半分が海外事業を経験しているかというと、現時点ではそうなっていません。真のグローバルカンパニーを目指すためには、海外を含めた人材の交流やジョブローテーションなどを体系的に構築していく必要があります。
井城:
私も同意見です。今年4月から海外と国内の2カンパニー制に組織変更されましたが、海外事業にはこれまで以上にエネルギーやリソースを割いて、組織や人材、事業の変化などのグリップを握り、人材育成だけでなく、月次経営報告の中身なども、国内カンパニーと同レベルにまで引き上げていけるとよいと思います。
Q:長期ビジョン「人と社会の『新たな信頼』を創造するリーディングカンパニー」の実現に向けて、グローリーが抱える課題を聞かせてください。
井城:
長期ビジョンの実現に向け、普段から、短期・中期・長期とでスパンを分けながら議論を行い、それぞれの将来に向けた絵を描いて、そこを起点にバックキャスティングして、今、何をしなければいけないかを考えていけるよう働きかけていきます。加えて、若い人材の挑戦を後押しするには、私の失敗談なども共有することが参考になるかもしれません。
内田:
長期ビジョン達成に向けては、役員や管理職が日々の仕事時間の3割くらいを将来を見据えた業務に充てていくといった、種を蒔く仕事が大事になります。その過程では必ず失敗することがあるでしょう。ただ、失敗を恐れずにチャレンジすることを応援し、促していく、そうした雰囲気を醸成していきたいと思います。グローリーは、現場における能率改善の取組みに非常に熱心で、全国的に表彰される事例もあります。若い人の意欲も取り込み、将来に向けた現場の挑戦を活かしていきたいと思います。
井城:
刻々と変化する世の中において、コロナ禍のように、今後も想定外の環境変化に直面することはあると思います。日々の変化を敏感に察知することも重要ですが、昨年コロナ禍を踏まえて当社が業績目標を変更したように、中長期の目標に対して、ある程度の時を経た時点で、現状から将来を見直し、世の中の変化に合わせていくことも重要です。昨年発表された日本政府のカーボンニュートラル目標を受けても、さらなる議論が必要だと考えます。
内田:
長期でのビジョンは意識しながらも、今、目の前で取り組むべき地道な仕事をしっかりとやりきる実行力が、将来のグローリーを形作ります。生体・画像認識事業などの新領域や、顧客基盤の裾野を広げていくための施策など、非常に良い議論がなされていますので、新しい領域へのチャレンジを続けてほしいと思います。
Q:最後に、グローリーに期待することを教えてください。
井城:
どのステークホルダーもグローリーにとってとても大切ですが、私が特に期待するのは、グローリーで働く社員が、仕事を通じて、一人ひとりの人生の中で代えがたい経験を得られるようになることです。与えられた使命の達成であったり、責任を負うプロジェクトや事業の成功だったりと、一人ひとりの目標は異なりますが、社員の皆さんが全力を尽くしてやり遂げられる、そのような一人ひとりの働き方をサポートする会社であってほしいと思います。
内田:
今後もグローリーが、株主、顧客、社員等全てのステークホルダーにとって価値ある魅力的な会社であり続けるためには、グローリーの独自性や個性を活かしながら、社会に役立つ製品・サービスを提供し続ける“いい会社”であることが必要です。そのために何をすれば良いのか、を皆で考えていく会社であってほしいと思います。