クリニック経営を成功に導くには?
失敗パターンと安定運営のポイント COLUMN
自分のクリニックを開業することは、多くの医師にとって大きな目標の一つです。一方で、「経営」という未知の領域に対して不安を感じる方も少なくありません。クリニック経営では、医療技術の提供だけでなく、経営者としての視点を持つことが成功への鍵となります。具体的には、スタッフ管理や資金繰り、集患(患者様を集めること)など、医療以外の知識やスキルも求められます。
経営に関する不安を抱えている方、これから開業を検討している方にとって、事前に対策を知っておくことで前向きに準備を進められるはずです。
なお、クリニック開業準備のスケジュールや手続きについては、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
▶【クリニック開業】準備のスケジュールと流れは?成功へのポイント」
クリニック経営に求められる「経営者」としての業務
クリニックを開業すると、院長は医師であると同時に経営者としての役割も担います。診療業務と並行してこなす必要があるため、あらかじめ内容を把握しておくことが大切です。
財務管理
クリニック経営において、お金の管理(財務)は最も重要な業務の一つです。日々の売上管理、経費の集計、資金繰り(キャッシュフロー)の把握を適切に行わなければなりません。
診療報酬は、患者様の窓口負担以外の分について国保連合会などから入金されるまで約2カ月のタイムラグがあります。そのため、現在の口座残高だけを見て判断すると、資金計画を誤る可能性があります。
また、会計・税務や行政への各種届出も経営者の仕事です。専門知識が必要となるため、税理士に業務委託するケースが一般的です。
財務管理のポイント
● 収支の内訳を正確に把握し「どんぶり勘定」を避ける
● 月次・年次で予算と実績を比較検証する
● 運転資金は余裕をもって準備しておく
労務管理
クリニックを安定して運営するには、スタッフのマネジメントが欠かせません。看護師や医療事務スタッフの採用活動から始まり、勤務シフトの管理、給与計算、教育・評価といった人事労務管理が院長の責任となります。
小規模クリニックでは一人ひとりの役割が重要になるため、人柄やチームワークも考慮した採用が求められます。スタッフが働きやすい環境を整えることで、定着率の向上と患者様へのサービス品質向上につながります。
労務管理のポイント
● 求職者にとって魅力的な条件を提示する
● スタッフ一人ひとりと向き合い、適切な役割分担を行う
● 残業削減や休暇取得推進など、働き方に配慮する
マーケティング
クリニックは基本的に地域住民を対象とした医療サービスです。患者様に来院してもらうための集患活動も院長の重要な仕事になります。
「良い医療を提供していれば自然と患者様は増える」と考えがちですが、現在はクリニック数も多く競争が激しい時代です。積極的に情報発信しなければ、良さが伝わらず患者様数が伸び悩む可能性があります。
WebサイトやSNSでの情報発信に加え、近隣の薬局や病院、介護施設などとのネットワーク構築も大切になります。地域住民にとってコンビニエンスストアのように身近で頼れる存在を目指しましょう。
マーケティングのポイント
● Webサイトは常に最新の情報に更新する
● Google ビジネスプロフィールへの登録を行う
● 地域のニーズに即したコンセプトづくりを意識する
多くの開業医が直面する経営の悩みと失敗パターン
クリニックを開業し経営を始めると、多くの院長が似たような悩みやつまずきを経験します。典型的な失敗例を知っておくことで、事前に対策を講じたり早期に軌道修正したりしやすくなります。
コスト管理の甘さによる、資金繰りの悪化
開業時にはクリニックの内装や医療機器導入などに多額の初期投資が必要になります。しかし、設備投資にお金をかけすぎたり、日々の経費管理が甘かったりすると、資金繰りを圧迫する原因となります。
よくあるケースとしては、必要以上に高価な最新機器を購入してしまい、患者様数の見込みが外れてローン返済に苦しむパターンがあります。また、診療圏調査で予測した患者様数と実際の来院数にギャップが生じ、開業当初の収支計画どおりにいかないケースも少なくありません。
帝国データバンクの調査によると、2021年のクリニックの倒産件数は22件で、負債総額は約38億円と報告されています。一方、休廃業・解散(自主的な事業終了)の件数は同年471件にのぼり、倒産より圧倒的に多い状況です。
出典:帝国データバンク「医療機関の休廃業・解散、倒産の17倍超」
経営が軌道に乗ったクリニックでも、医療機器の故障など突発的な高額出費で一気に資金繰りが悪化することがあります。将来の突発事態に備えた資金留保を心がけましょう。
資金繰り悪化を避けるポイント
● 患者様数予測は楽観的にしすぎず、安全率を見込んだ計画を立てる
● 開業時の設備投資は「身の丈」に合わせ、リースや中古も検討する
● 少なくとも数カ月分の固定費を賄えるキャッシュを確保しておく
業務過多による、院長自身の疲弊
クリニック開業当初は、診療に加えて経営・雑務まで院長自身でこなさなければならないことが多く、心身ともに疲弊してしまうケースがあります。
日々の診療で忙殺されるあまり、本来注力すべき経営戦略の立案や改善活動にまで手が回らない状況は、多くの開業医が陥りがちな問題です。会計業務やスタッフ採用面接、Webサイト更新など、診療以外にもさまざまな仕事があります。
院長が疲弊してしまうと、適切な経営判断が難しくなり、患者様対応にも影響が出る恐れがあります。最悪の場合、体調を崩して休診に追い込まれる事態にもなりかねません。
業務過多を避けるポイント
● 任せられる業務はスタッフや外部に委託する
● 業務を棚卸しし、効率化できるものを洗い出す
● 休診日や営業時間外にはしっかり休息を取る
【Q&A】クリニック経営の廃業率と主な原因
開業を目指す方にとって廃業リスクは気になるところです。客観的な数字を知ることで、冷静な対策を考える助けになります。
開業医(クリニック)の廃業率はどれくらいですか?
一般に言われるクリニックの廃業率は、他業種に比べると低い水準にあります。
中小企業庁の調査によれば、全産業の平均廃業率が年間約3.3%であるのに対し、医療・福祉業界の廃業率は2.3%程度と報告されています。
出典:中小企業庁「2024年版 小規模企業白書」
また、帝国データバンクが発表した「医療機関の『休廃業・解散』動向調査(2023年度)」では、クリニックの休廃業・解散件数は580件、倒産件数は28件でした。休廃業・解散件数は倒産件数の約20.7倍にのぼり、経営破綻ではなく自主的に事業を終了するケースが圧倒的に多いことが分かります。
出典:帝国データバンク「医療機関の『休廃業・解散』動向調査(2023年度)」
医療という事業は景気に左右されにくく常に一定の需要があるため、適切な対策を講じれば経営を安定させやすい業種といえます。
なお、廃業したクリニック院長の平均年齢は70.6歳(2021年時点)であり、近年増加している廃業の多くは院長の高齢化や後継者不在による自主的な事業終了が主因と分析されています。
クリニックが廃業する原因は何ですか?
クリニックが経営に行き詰まり廃業に追い込まれる主な原因は、「患者様数の減少(集患不足)」と「資金繰りの悪化」の2つです。
地域への周知不足やマーケティング力不足で患者様が集まらないケース、資金計画の甘さや過剰な支出でキャッシュが底を突くケースが典型的です。
近年では「人手不足」による廃業も増えています。スタッフ確保・定着に失敗し、必要な診療体制を維持できなくなるケースや、帳簿上は黒字でも人がいなくて継続できない「黒字廃業」も報告されています。
クリニック廃業の主な原因
● 患者様数の低迷 – 集患・マーケティング不足、立地条件のミスマッチなど
● 資金繰り悪化 – 資金計画の甘さや過剰な支出によるキャッシュアウト
● 人手不足 – スタッフ確保・定着に失敗し診療運営が困難になるケース
● 後継者不在・院長高齢化 – 後を継ぐ人がいなければ閉院せざるを得ない
● 経営スキル不足・環境変化 – 経営管理の未熟さや地域状況の変化への対応不足
これらの原因を他人事と捉えず、自院でも起こりうるリスクとして想定し、早めに対策を講じることが重要です。
安定したクリニック運営を実現するためのポイント
クリニック経営には課題が存在しますが、適切な対策を講じれば経営の安定化・成功に近づけます。ここでは、押さえておきたいポイントを紹介します。
コンセプトを明確にする
クリニックの経営理念やコンセプトを明確に打ち出すことは、安定経営の土台になります。「何のためにクリニックを経営するのか」「地域にどんな医療を提供したいのか」を言語化し、スタッフ全員と共有しましょう。
経営理念が曖昧だったり、スタッフに浸透していなかったりすると、各人の判断基準や患者様対応にブレが生じ、クリニックとしての独自性や強みが発揮できません。
コンセプトが明確であれば、ターゲットとなる患者様層に響きやすくなり、スタッフにとっても判断に迷ったときの行動指針となります。
コンセプト設定の例
● 「地域のかかりつけ医」として家庭医療に徹するクリニック
● 「働く女性を応援する」女性専門外来に注力するクリニック
● 「最新の内視鏡技術で早期発見」など専門特化型のクリニック
● 「小児と親御さんが安心できる」キッズスペースや育児相談に力を入れるクリニック
患者様の視点に立ったサービス向上
患者様目線に立ったサービスの充実は、リピーター(再来患者様)を増やし経営を安定させるうえで重要です。
患者様満足度を左右する要素としては、スタッフの接遇マナー、院内の清潔感や雰囲気、待ち時間の長短、説明の丁寧さなどが挙げられます。高品質の医療提供は大前提ですが、それに加えてこれらの点を改善・工夫することで満足度は格段に高まります。
「予約したのに長時間待たされた」「受付の対応が冷たかった」という体験は、どんなに医師の腕が良くても次回の来院を躊躇させる原因となります。
サービス向上の施策例
● 予約制の導入や待ち状況の見える化で待ち時間を短縮する
● 笑顔での挨拶・丁寧な言葉遣いなど接遇マナー研修を実施する
● 清掃を徹底し、常に清潔で明るい空間を保つ
● 病状や治療方針の説明は専門用語を避け、分かりやすく伝える
医療DXの推進による業務効率化
限られた人員でクリニックを運営するには、電子カルテやレセコン(レセプトコンピューター)とPOSレジの連携による業務効率化が不可欠です。
これらのシステムが連携していると、診療から会計までの流れがスムーズになり、業務の省力化と生産性向上を実現できます。特に、診療後の会計待ち時間は患者様満足度に直結するため、ここをスムーズにすることが経営改善の近道といえます。
システムの連携によって単純作業や手計算が減り、ヒューマンエラーの削減、残業時間の短縮、スタッフ負担の軽減につながります。
システム連携で効率化できる業務例
● 受付・問診:タブレットのWeb問診で事前入力、来院前予約で混雑緩和
● 診療記録:紙カルテから電子カルテへ移行し、記載・保存・検索の時間を短縮
● 会計処理:レセコンとバーコード連動したPOSレジで会計業務を自動化し、待ち時間を削減
「REGIX」でクリニックの業務を効率化する
業務効率化の具体的なソリューションとして、グローリー株式会社が提供するクリニック向けPOSレジシステム「REGIX(レジックス)」を紹介します。
REGIXは、POSと自動つり銭機が一体化したクラウド型の会計システムです。クリニックの会計業務を大幅に効率化し、患者様の利便性も高められます。
REGIXの主な特長は以下のとおりです。
| 特長 | 内容 |
|---|---|
| レセコン連携 | 領収書に印字されたバーコードをPOSレジが読み取り、会計金額の入力を自動化。入力ミスやつり銭ミスをゼロにできる |
| 会計待ち時間の短縮 | セミセルフ会計に対応し、患者様自身が操作して支払いを完結できる |
| 売上記録の自動化 | 会計データをすべて自動で記録。日々の売上集計やレジ締めが短時間で完了する |
| 現金・キャッシュレス両対応 | クレジットカードや電子マネー決済にも対応可能(オプション) |
| 初期費用0円・月額定額制 | 月額27,000円~30,000円(税別)。機器、保守サポート、交換パーツ費用がすべて含まれる |
| 365日サポート体制 | 年中無休で電話相談や出張修理に対応 |
REGIXを導入すれば、会計処理が標準化・自動化され、スタッフの時間に余裕が生まれます。その分を患者様への声かけや問診補助など、本来の業務に充てられます。
まとめ
クリニック経営を成功・安定させるためには、医師であると同時に経営者としての視点を持ち、よくある課題に対策を講じていくことが重要です。
この記事のポイント
● クリニック経営では資金管理・労務管理・マーケティングの3つが求められる
● 典型的な失敗パターンは「コスト管理の甘さ」と「業務過多による院長の疲弊」
● クリニックの廃業率は他業種より低く、対策すれば経営を安定させやすい
● コンセプトの明確化、患者様視点のサービス向上、電子カルテやレセコンとPOSレジの連携による効率化がポイント
● 会計業務の効率化には「REGIX」の導入が有効
業務効率化はこれからのクリニック経営において避けて通れないテーマです。「REGIX」のようなシステムを活用すれば、院長は本質的な経営戦略や診療に集中できます。
クリニック経営は決して楽な道ではありませんが、不安は適切な知識と準備で乗り越えられます。課題に対して一つひとつ対策を講じ、患者様やスタッフとともに成長するクリニックを目指してください。