店舗の回遊率を上げるには?データで導き出す回遊施策と分析手法 COLUMN

店舗の回遊率を上げるには?データで導き出す回遊施策と分析手法

「来館者数はある程度いるのに、売上が伸びない」「一部の人気フロアには人が集まるのに、上層階や奥のエリアへ流れていかない」——商業施設の運営に携わる方なら、こうした悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。
原因の一つとして考えられるのが、回遊率の低さです。来館者数が十分あっても、館内を広く使ってもらえていなければ、施設全体の売上ポテンシャルは活かしきれません。
本記事では、店舗・商業施設における回遊率の定義から、売上との関係、現場でよく起きている課題、改善施策、測定方法、そしてデータを使った継続改善の考え方まで、順を追って解説します。
この記事でわかること

● 店舗における回遊率の定義と「来館者数」との違い
● 回遊率が売上・顧客満足度・リピートに与える影響
● 現場で起きやすい回遊の課題と、その原因
● 導線設計やイベント、アプリケーション活用などの改善施策
● 数値化・データ化が改善に不可欠な理由

施設の運営・マーケティングを担当しており、来館者の館内行動をもっと戦略的に活かしたいと考えている方に向けた内容です。

目次
店舗における「回遊率」とは

商業施設の回遊率を語るとき、まず「来館者数と回遊率は別の問題だ」という点を整理しておく必要があります。集客と回遊は切り離して考えるべきであり、この認識があるかどうかで施策の方向性が大きく変わります。

回遊率の定義

回遊率とは、1回の来館の中で来館者が施設内をどれだけ広く・深く利用したかを表す指標です。
なお、「回遊率」の計算式は業界全体で統一されていません。管理指標の設計は、実店舗・商業施設では業態、立地、施設規模、フロア構成、目的来館比率によって異なります。考え方の一例として、「施設内の全フロア数・全エリア数に対して、来館者が実際に訪れたフロア・エリアの割合」として捉えるケースがあります。
実務では、以下のような複数の指標を組み合わせて把握するほうが実態に近くなります。

【回遊を構成する主な指標例】
● 複数フロア到達率:来館者のうち2フロア以上を訪れた割合
● 特定売り場到達率:奥のエリアや上層階まで到達した割合
● ゾーン間遷移率:エリアをまたいで移動した割合
● 平均滞在時間:1回の来館における館内滞在時間
● 平均立ち寄り店舗数:1回の来館で立ち寄ったテナント数

重要なのは、来館者数(集客)と回遊率を混同しないことです。来館者数が多くても、入り口近くの人気店だけで用事が済んでしまう施設では、他フロア・他区画の機会損失が積み重なります。逆に来館者数が横ばいであっても、複数のエリアを巡ってもらえれば立ち寄り機会や購買接点を増やせます。
「集客」と「回遊」をセットで改善することが、施設全体の売上最大化につながります。
なお、「回遊率の全国平均目安」を断定的に示すのは難しい面があります。業態・立地・施設規模・目的来館比率によって大きく変わるためです。自施設の平常時データをベースラインとして取り、曜日別・時間帯別・イベント前後で比較していく考え方が現実的です。

回遊率が示す「館内での体験の深さ」

回遊率は単なる移動量の問題ではなく、来館者が施設をどれだけ楽しみ・活用したかという「体験の質」に近い指標です。
館内を広く巡ることで商品やサービスへの接触機会が増え、興味・関心が形成されやすくなります。回遊率が高い来館者ほど購買点数・滞在時間・再来館率が高まる傾向があるのは、この接触機会の差が積み重なるためです。
来館者が「館内を自然に楽しめる環境」をつくることが、回遊率の向上と体験価値の向上を同時に実現します。
ただし、「回遊率を上げる=無駄に歩かせる」ということではありません。わかりやすい導線、立ち寄りたくなるイベント、関連カテゴリーへの自然な気付き——こうした要素がそろって初めて、来館者にとって快適な回遊が成立します。その意味では、回遊率の改善は施設のUX改善でもあります。

回遊率が店舗の売上を左右する理由

回遊率が高いと、なぜ売上に影響するのか。この構造を理解しておくと、改善施策を選ぶときの判断軸が明確になります。

立ち寄り機会の増加が購買につながる仕組み

来館者が複数のフロアや店舗を巡ることで、計画外の購買(衝動買い・ついで買い)が生まれやすくなります。
入り口近くの目的店舗だけで用事が済んでしまう施設では、他区画での接触機会が生まれません。自然に別フロアや別ゾーンへ流れる設計ができていれば、来館者は複数のテナントと接触できます。来館者数が横ばいでも、1人あたりの立ち寄り店舗数が増えれば、施設全体の売上ポテンシャルは広がります。
「来館者数を増やす」ことと「来館者1人あたりの購買機会を増やす」ことを、両輪で考えることが重要です。
物販・サービス・飲食・文化娯楽施設などを効果的に配置することで、来館者増加や回遊性向上、滞在時間延長が図られます。テナントや機能の配置は単なる区画埋めではなく、回遊と滞在を生み出す設計行為です。

顧客満足度・リピート来館との関係

回遊率は短期の売上だけでなく、顧客満足度や再来館率にも影響します。
施設内を広く回遊した来館者は、館内での経験が豊かになりやすく、「また来たい」「他のエリアも見てみたい」という気持ちが生まれやすくなります。来館者の満足度は、再来館だけでなく良い口コミにつながりやすいことも見逃せません。また、リピーターは新規来館者に比べて1回あたりの消費額も安定しやすい傾向があります。
このように、既存来館者の体験の質を高めることは、新規来館者を獲得するコストをかけずに売上を維持・向上させるうえで大きな意味を持ちます。
施設運営において「来館者数の増加」と同様に、「1人あたりの来館価値の最大化」を意識することが、長期的な収益につながります。
既に来館している方の滞在や立ち寄りを増やせれば、広告費や新規集客コストを過度に積み増さずに改善できます。集客コストの観点からも、重要な視点です。

多くの店舗に見られる回遊の課題
多くの店舗に見られる回遊の課題

「来館者数はそれなりにいるのに、売上に結びつかない」そう感じる施設の多くに、回遊面での共通課題があります。よく見られるのは以下の二つです。

【商業施設でよくある回遊の課題】
● 特定フロア・エリアへの来客の集中
● 滞在時間が短く、購買に至らない

どちらも「来館者はいるのに、施設全体として活用されていない」という状態です。それぞれ詳しく見ていきます。

特定フロア・エリアへの来客の集中

商業施設では、食料品フロアや人気テナント、入り口付近への来客が集中し、上層階や奥のエリアに人が流れないというケースがしばしば見られます。
この状態が続くと、フロアや区画によって売上格差が広がります。特に上層階・奥まったエリアへの誘導がうまくいっていないと、テナントの満足度や退店率にも影響が出てきます。
「入り口から奥への到達率」という考え方があるように、店内深部まで回遊しているかを把握するには、入り口近辺の通過人数だけでなく「どこまで到達したか」を見ることが重要です。通過人数が多くても、奥のエリアや上層階まで来館者が届いていなければ、施設全体が活用されているとは言えません。
施設全体を最適化するには、「どのエリアに何人来ているか」をフロア・ゾーン別に把握することが出発点になります。
また、核テナントや集客力の高い施設が機能していない場合、他フロアへの人流が弱くなります。強い目的施設があっても、周辺エリアへうまく流せなければ全館最適にはなりません。

滞在時間が短く、購買に至らない

目的の店舗だけ寄ってすぐ退館してしまう「目的来館型」の行動パターンは、施設全体の売上に影響を及ぼします。
近年の商業施設では、物価高や時間的制約の影響もあり、必要な買い物を効率よく済ませる行動が強まっていると指摘されています。来館目的が明確であるほど回遊型消費は弱まり、ついで買いや偶発的な接触が減ります。
「滞在時間が短いこと自体が問題」というより、「施設の戦略に対して短すぎること」が課題です。来館者に館内を巡る理由を提供することが、改善の鍵になります。
出典:今後の商業施設のあり方(ザイマックス総研)

課題の把握には「数値化」が不可欠

現場では、「このフロアはなんとなく弱い気がする」「イベント日は混んでいるのに売上につながっていない気がする」と感じることが少なくありません。一方で、感覚だけでは施策の優先順位は決められません。
回遊施策の効果を高めるには、KPIの設定と定期的なデータ収集・分析が不可欠です。回遊の課題は現場感として気付けても、「どこを・どう改善するか」の判断には数値が必要です。
特にPOSデータだけでは、把握できることに限りがあります。

【POSデータでわかること・わからないこと】
● わかること:何が売れたか、いくら売れたか(購買の結果)
● わからないこと:どのルートで来たか、どのエリアで立ち止まったか、買わなかった来館者がどこまで回ったか(購買に至る過程)

「POSは結果、回遊データは過程」と整理すると理解しやすいでしょう。売上という結果を改善するには、その手前の行動過程を測る必要があります。スタッフが観察して手動記録する方法もありますが、時間・手間がかかるうえに、時間帯・曜日・エリアを横断した分析には不向きです。
問題を正確に把握し、効果的な改善につなげるには、来館者の動きそのものをデータとして取得できる環境を整えることが、施策の出発点になります。

回遊率を高めるための施策と設計のポイント

回遊率を高める施策は複数ありますが、どれも「現状を数値で把握し、効果を検証する」サイクルと組み合わせることで機能します。ここでは代表的な4つの施策を整理します。

導線設計の見直し

導線設計は、来館者が「自然に施設を広く使える環境」をつくる最も基本的な施策です。
通路の広さだけでなく、次の3層で考えると実務的です。

【導線設計を考える3つの層】
● 入り口から最初の分岐まで:何を見せるか、どのフロアへ誘導するか
● 各フロア・各ゾーンへの遷移:迷わず進めるか、視認性は確保できているか
● 奥や上層階への背中押し:目的がなくても進む理由(サイン・休憩ポイント・注目店舗の配置)があるか

誘導サインの整備、エスカレーター・エレベーターの配置見直し、休憩スポットの設置など、快適に動き回れる環境が回遊の前提になります。
導線設計の見直しは、来館者の体験改善と回遊率向上を同時に実現できる、費用対効果の高い取り組みです。

フロア間の誘導を強化

上層階に集客力の高いテナントや施設を配置し、各フロアを経由させながら来館者を流す「シャワー効果」は、フロア間誘導の代表的な考え方です。
フードコート、シネマ、体験型施設、キッズ関連施設など目的性の強いテナントを上層階や端部に配置することで、来館者が自然に各フロアを経由する仕組みをつくれます。逆に、1階のスーパーマーケットや話題の飲食店など下層階に強い集客装置を置き、上層階へ誘導する「噴水効果」と組み合わせることで、双方向の人流をつくる設計も可能です。
ただし、上層階に強い施設を置けば来館者が自動的に下層階へ流れるわけではありません。途中フロアに立ち寄る理由がなければ素通りされます。シャワー効果を機能させるには、途中の視認性・イベント・休憩スペース・関連カテゴリーの配置との組み合わせが必要です。
シャワー効果の詳細については、以下のコラムも参照してください。
【関連記事】シャワー効果を活かしたマーケティング 戦略売上と集客を向上させる方法
シャワー効果は「上層階に強いテナントを置く」だけで完結するものではなく、途中フロアへの誘導設計とセットで考えることが重要です。

館内イベント・体験型コンテンツの企画

館内イベントや体験型コンテンツの本質は、来館目的の外側に追加の行動を発生させることです。
スタンプラリー、ワークショップ、フォトスポット設置、館内回遊型キャンペーンなどは、来館者に「館内を巡る理由」を提供します。デジタルスタンプラリーは館内の複数店舗を巡りながらスタンプを集める施策で、滞在時間の延長や来店数の増加が期待できます。
企画設計では、ターゲット層への適合が重要です。

【ターゲット別の企画方向性の例】
● ファミリー層:キッズ要素を含む参加型イベント
● 若年層:SNS投稿につながるフォトスポットや限定体験
● 中高年層:参加ハードルが低く、負担の少ないスタンプラリーや展示

イベントを「集客策」としてだけでなく「館内移動を発生させる装置」として設計することで、回遊率改善に直結した効果が期待できます。

アプリケーション・クーポンを活用した誘導施策

施設アプリケーションやデジタルクーポンを活用することで、来館者を能動的に特定のフロアやゾーンへ誘導できます。
「このフロア限定クーポン」「次のゾーンに行くとポイント付与」「すいているレストランのリアルタイム案内」など、来館者の状況に応じた情報をスマートフォン経由で届けることで、回遊の偏りを是正する設計が可能です。
会員データとの連携により、来館頻度やよく訪れるエリアに合わせたパーソナライズ配信も可能になります。単なる値引き施策にとどめず、導線設計と連動させることがポイントです。

【アプリケーション・クーポン活用の具体例】
● 上層階利用者に下層階のカフェクーポンを配信する
● イベント参加者に未訪問エリアの特典情報を案内する
● 混雑時にすいているゾーンへ誘導する情報を発信する

アプリケーションやクーポンを、導線設計と連動した「回遊の偏りを是正するツール」として活用することで、施策の効果が高まります。

店舗の回遊率を測定するには

どれだけ良い施策を打っても、現状を正確に把握していなければ改善の的が絞れません。「どう測るか」を設計することが、施策の前提になります。

従来の測定手段と限界

従来の測定手段には目視観察・アンケート・POS・通行カウントがありますが、いずれも商業施設全体の回遊を広範に把握するには限界があります。
スタッフによる目視・手動記録は、小規模店舗なら一時的に成立しますが、時間帯・曜日・エリアをまたいだ継続的な分析には向きません。アンケートは行動理由や満足度を取るには有効ですが、「実際にどこを通ったか」を高精度で把握することは困難です。
POSデータでわかるのは「購買の結果」です。「購買に至らなかった来館者の動き」「どのルートで来たか」「どのフロアに何分いたか」は、POSでは取得できません。
回遊課題の可視化には、売上データ(購買の結果)と人流データ(行動の過程)を別軸で持つことが必要です。

デジタル技術を活用した測定の仕組み

店内に設置したセンサー(IoTデバイス)やカメラを使って来館者の動きを自動・継続的に計測する方法が、現在の主流です。
この仕組みを使うことで、以下のようなデータを取得できます。

【デジタル計測で取得できるデータの例】
● フロア別の滞在者数
● エリアごとの平均滞在時間
● 館内での移動経路(回遊ルート)
● 曜日・時間帯別の混雑状況
● イベント実施前後の人流比較

継続的にデータを蓄積していくことで、曜日・時間帯別の傾向把握や施策前後の比較検証ができます。「やってみたが効果がわからなかった」という状態を脱し、数値に基づいた改善サイクルへ移行できます。
なお、来館者の動きを計測する際はプライバシーへの配慮が必要です。個人情報保護委員会の整理では、防犯目的で取得したカメラ画像・顔特徴データをマーケティング等の商業目的に利用する場合は、あらかじめ本人の同意が必要とされています。個人識別を前提としない形でデータを取得できる仕組みを選ぶことが基本になります。
出典:個人情報保護委員会「カメラを設置してカメラ画像・顔特徴データ等を取り扱う場合の安全管理措置」
デジタル計測ツールを活用することで、これまで「なんとなく」で判断していた回遊の課題を、数値として把握・検証できるようになります。

BUYZOで来館者の動きを可視化する
BUYZO

回遊施策を継続的に改善するには、「なんとなく効果があった気がする」では不十分です。どのエリアの滞在が増えたか、どのフロア間の移動が生まれたか、施策の前後を数値で比較できる環境があって初めて、次の打ち手が見えてきます。

施策の精度を上げるために必要なこと

回遊率の改善において最初に必要なのは、「どのエリアが手薄か」「どの時間帯に人の流れが止まるか」という実態把握です。
感覚や経験則ではなくデータに基づいて課題を特定することで、施策の優先順位づけと効果検証が可能になります。KPIの設定と定期的なデータ収集・分析が欠かせない理由も、ここにあります。
データがあることで、次のことが可能になります。

【データがあることで実現できること】
● 弱いゾーン・時間帯の特定
● 施策の優先順位づけ
● イベント・レイアウト変更の前後比較
● 改善サイクル(PDCA)の継続

施策を打つことより、施策の結果を数値で確認し次に活かすことが、回遊率の継続的な改善につながります。

BUYZOで実現できること

BUYZOのAIBeaconを施設内に設置することで、来館者の実際の動きをデータとして継続的に把握できます。
BUYZOでは、来店者のスマートフォンをAIBeaconのWi-Fi通信で検知し、GPSでは把握しにくい「建物内の何階の、どのエリアに来店したか」まで可視化できます。取得できるデータの例は以下の通りです。

【BUYZOで把握できるデータの例(BUYZO BI)】
● 各フロアの滞在者数
● エリアごとの滞在時間
● 店内回遊時の移動経路(遷移傾向)
● 来店回数・再来館状況
● ヒートマップによる人の集中エリアの可視化

例えば、「イベント実施前後で上層階への到達率がどう変わったか」「フードコート利用者がその後どのフロアへ流れたか」「改装後に奥の区画への滞在が延びたか」といった比較・検証が可能です。
また、BUYZOが取得するデータには、氏名・メールアドレス等の個人を識別できる情報は含まれません。プライバシーへの配慮を保ちながら運用できる点は、導入を検討するうえでの安心材料になります。
BUYZOは単なる人流計測ツールではなく、「回遊施策を設計・検証・改善し続けるための運用基盤」として機能します。

まとめ

店舗・商業施設における回遊率は、来館者数とは別に、館内体験の深さを表す指標です。集客と回遊は切り離して考える必要があり、両立させることで施設全体の売上ポテンシャルを最大化できます。
回遊率が低い施設に共通するのは「特定エリアへの集中」と「滞在時間の短さ」です。これらは、導線設計の見直し、フロア間誘導の強化、イベント企画、アプリケーション・クーポン活用といった施策で改善できます。ただし、どの施策も現状の数値把握と効果検証がなければ改善の再現性が上がりません。
まずは来館者の動きを可視化し、弱いエリアと時間帯を特定することが第一歩です。BUYZOなら、各フロアの滞在者数や館内の移動経路(遷移傾向)、滞在時間などをもとに、回遊施策の仮説立案から効果検証までのサイクルを回すことができます。

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