商圏分析に有効なハフモデルとは?
計算方法や活用のポイントを紹介
COLUMN

競争が激化する小売業界において、とても重要になるのが立地の選定です。適切な立地を選ぶには、正確な商圏分析が欠かせません。有効な分析手法として注目を集めているのが、消費者の店舗選択行動を数値化できる「ハフモデル」です。
ここでは、ハフモデルの基本的な計算方法から応用モデル、さらに精度の高い分析を実現するためのポイントをご紹介します。

目次
ハフモデルとは
ハフモデルとは

ハフモデルとは、アメリカの経済学者であるデイヴィッド・ハフが考案した商圏分析の代表的な手法です。ハフモデルは、消費者が特定の店舗を選択する確率を数値化します。その手法は「消費者はどの店舗を選ぶのか」という複雑な意思決定プロセスを「距離」と「魅力度」という2つの変数で算出します。

ハフモデルは、消費者の店舗選択で以下の2つの確立に基づいています。
● 売場面積が大きい店舗ほど、選択される確率が高い
● 消費者の自宅から遠い店舗ほど、選択される確率が低い

これらの消費者行動の特性を数式化したハフモデルは、新規出店時の立地選定において、高い集客が見込める場所を客観的に判断するための重要なツールとして活用されています。

ライリーの法則

ハフモデルの基となる考え方に、ライリーの法則があります。ライリーの法則は、2つの都市間に位置する地域の購買力を予測します。

例えば、A市とB市の間にあるC町の消費者が、A市・B市のどちらで買い物をするかは、各都市の人口の大きさに比例し、都市までの距離の2乗に反比例するという法則です。つまり、人口が多い都市ほど購買力が強くなり、距離が遠くなるほど購買力は弱くなります。

ハフモデルの計算式
ハフモデルの計算式

ハフモデルで求める集客率(吸引率)は、以下の計算式で求められます。

吸引率=魅力度/距離α÷Σ(魅力度/距離α)
※ Σ(分母の総和)を100として計算します。

ここで、ハフモデルの計算に用いる変数を説明します。

吸引率

ハフモデルにおける吸引率とは、競合店舗との比較で、その店舗がどの程度の集客力を持つかを示す数値です。「吸引」とは、店舗が周辺エリアから顧客を集める力を指し、どれだけ広い商圏から顧客を引き寄せられるかを表しています。

魅力度

ハフモデルにおける魅力度は、店舗の持つ集客力を数値化した指標です。基本的には売場面積を用いますが、実際の商圏分析では、店舗の魅力をさまざまな要素から総合的に評価する必要があります。品揃えの豊富さ、駐車場の収容台数、店内の快適性など、消費者の店舗選択に影響を与える要素が考慮されるケースがあります。

距離抵抗係数

消費者が店舗までの距離をどの程度負担に感じるかを数値化した指標です。この係数は商品の特性によって大きく変動します。

例えば、食料品や日用品といった頻繁に購入する商品の場合、消費者は近距離での購入を強く希望するため、係数は高く設定されます。一方、家電製品や宝飾品のような商品は、品質や価格の比較検討を重視し、多少遠くても目的の商品があれば移動し購入する傾向にあるため、係数は低くなります。

ハフモデルの計算例

ハフモデルの計算式を用いて以下の店舗X・店舗Yの吸引率を比較してみましょう。

店舗 売場面積(平方メートル) 距離(メートル)
X 1,500 150
Y 2,000 500

※魅力度には店舗面積を使用し、距離抵抗係数(α)は1、Σは100として計算。

【ハフモデルの計算式】
吸引率=魅力度/距離α÷Σ(魅力度/距離α)


【店舗Xの吸引率】
吸引率=(店舗X面積/店舗X距離)÷[(店舗X面積/店舗X距離)+(店舗Y面積/店舗Y距離)]
71.43% =(1,500/150)÷[(1,500/150)+(2,000/500)]

【店舗Yの吸引率】
吸引率 = (店舗Y面積/店舗Y距離)÷[(店舗X面積/店舗X距離)+(店舗Y面積/店舗Y距離)]
28.57% =(2,000/500)÷[(1,500/150)+(2,000/500)]

計算の結果、店舗Xの吸引率は71.43%、店舗Yは28.57%となりました。
店舗Yの方が売場面積は大きいものの、距離が遠いため、結果として店舗Xの吸引率が高くなりました。

商圏分析に用いるハフモデルの種類
商圏分析に用いるハフモデルの種類

ハフモデルは、店舗の集客力を「距離と面積」から数値化します。さらに現実に即した分析ニーズに応えるため、「修正ハフモデル」と「アドバンスハフモデル」が考案され、実務でも広く活用されています。

修正ハフモデル

ハフモデルを店舗の実態にマッチした内容に修正したモデルです。店舗面積と距離という要素に加え、営業時間やブランド力といった現代の消費者行動に影響を与える要素も考慮します。距離抵抗係数を2.0に固定することで計算を標準化し、実践的な商圏分析を可能にします。

アドバンスハフモデル

店舗の集客力をより現実的に予測するためのモデルです。売場面積を主な指標とするハフモデルに対し、駐車場の収容力や品揃えの充実度など、複数の要素を組み合わせて店舗の魅力度を算出します。

消費者の実際の購買行動の内容で吸引率が予測でき、新規出店計画や競合店対策において、信頼性の高い判断が可能です。

ハフモデル活用の注意点
ハフモデル活用の注意点

ハフモデルは比較的取り組みやすい商圏分析ですが、精度の高い結果を得るためには、以下の注意が必要です。

商品に応じて距離抵抗係数を調整

消費者の購買行動は商品によって大きく変化します。正確な商圏分析をするためには、商品特性に応じて距離抵抗係数を調整する必要があります。

食品や日用品など、日常的に必要な商品は近場での購入意識が強いため、距離抵抗係数は高めに設定します。一方、家電製品や高額商品は、品質や品揃えを重視して購入を決めるため、遠くても足を運ぶ傾向があり、低めの係数設定が適切です。

客観的な数値に基づいて魅力度を設定

ハフモデルにおける魅力度の設定には、徹底した客観性が求められます。個人的な判断や感覚を排除し、具体的な数値に基づいて評価を行うことでより実効性の高い分析が可能です。

売場面積、駐車場の収容台数、来店客数、売上実績など、明確に測定できるデータを用いて総合的に判断します。特に競合分析を行う際は、自社店舗への主観的な評価を排除し、純粋に数値やデータに基づいた客観視点での評価を行います。

小規模な検証から始める

商圏分析の精度を高めるには、過去の分析値がある既存店舗での検証から始めることが重要です。

まず小規模な範囲で分析を行い、過去の分析値と比較検証をして手法の妥当性を確認します。小規模な検証作業で分析のノウハウを蓄積し、得られた知見を新規出店計画などのより大きな判断に活用することで、信頼性の高い予測が可能です。

ハフモデルで商圏分析の精度向上
ハフモデルで商圏分析の精度向上

消費者の店舗選択を「距離」と「魅力度」から予測するハフモデルは、商圏分析の基本ツールとして広く活用されています。ただし、より実践的な分析には、営業時間やブランド力など、複数の要素を組み合わせた分析が必要です。

グローリーの「BUYZO BIツール」は、ハフモデルによる商圏分析の精度を高める豊富なデータを提供します。日別の来店客数や属性分析、店舗内での滞在状況、移動経路の把握により、店舗の実態を詳細に可視化。また、商圏内の顧客動向や競合店との比較分析も可能です。

より効果的な商圏分析の進め方について、専門スタッフが対応します。まずはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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